マネーゲームから脱出する法の危険性

先日、ロバート・シャインフェルド著、本田健訳の「ザ・マネーゲーム」から脱出する法を読んだ。全体的な解説などはこちらに書いたが、どうもこの本は一歩間違えばカルト宗教にもなりかねないような内容に感じた。

なんでこの本を本田健氏はわざわざ翻訳にして日本人に読んでもらおうと思ったのだろう?(単純に訳してくれと依頼されただけかもしれないけど)

この本では「人生とは、自分の作った人間ゲームを記憶を失くした自分がプレイしている」と言った内容で綴られていた。マトリックスで言えば、自分がマトリックスを作ったアーキテクチャであり、そのマトリックス世界に住んでるアンダーソン(ネオ)も自分だとしている。

つまり、自分が作った世界なんだから、自分が好きなように生きれば良いと。
しかも、自分が実はアーキテクチャで、この世界はマトリックスなんだと気付く事が出来れば、ネオのようにそのマトリックスの一般常識に従わない生活が出来ると。

パラドックス(矛盾)

この本の面白い所は、世界の全てを自分が作ったという所。

例えば、私は自分の命令をなんでも聞いてくれる美人Androidが出来たらいいなと時々思う。すでに本物の人間と見間違う位のラブドール(ダッチワイフ)やそっくりさん人形などは売っているが、それにAIが搭載されていて、機械式で動いて、自分の言う事をなんでも聞いてくれたら、これほど素晴らしい事はないだろう。

しかし、この本では、今の両親、兄弟、恋人、夫もしくは妻、友人などなど、みんな自分が想像したモノだというのだ。HUNTER X HUNTERのグリードアイランドの念で出来た登場人物達のような存在だと言うのだ。

つまり、自分の思い通りに動く人々でこの世はすでに構成されているというのだ。なんとも不気味な世界観である。

で、この本のパラドックス(矛盾点)は、全てのこの世のモノは自分が想像したものだとすれば、この本も自分が書いたという事になる事だ。

つまり、ロバート・シャインフェルドという人物も自分が想像して作った人物で、この本を英語で書いたのも実質自分、そしてそれを本田健に訳させたのも自分だというのだ。

だから、ロバート・シャインフェルドがいくら「私はこの方法で成功しましたよ」と言っても、ロバート・シャインフェルドなんていう人物は実は存在しないし、彼の人生など存在しないという事になる。そして、彼の生徒達もシャインフェルドの教えを実践しているというが、そもそも彼の生徒達の人生なんてのも存在しない事になる。(私の人生の登場人物はすべて私の創造したものなので)

もう考えるだけで、訳が分からない話なわけだ(汗)。本人もそれを承知で書いてる所がすごいのだが。

下手するとカルトになる理由

私がこの本を読んで怖いなと感じたのは、下手するとカルト宗教みたいになってくるのではと感じた所だ。

なぜなら、この世界がテレビゲームのようなマトリックス世界で、しかも自分のためだけに存在しているとするなら、他人を殺しても良い事になってしまう。

テレビゲームのように他人を手当たり次第惨殺しても、「どうせ空想世界なんだし、他人なんて本当は存在しない。こいつらみんな俺が作ったプログラムなんだから」って事になってしまう。

人によってはこの本を読んで、この本を信じ、そういう危険な捉え方をする事だって出来ると感じた。

ネオにはなれない

この本では、本来の自分(この世界を創造した完璧な自分)を思い出し、この世界は虚像(マトリックス)なんだと完全に認識した時に、マトリックス世界のルールに捕らわれないで、自分のルールでこの人間ゲームを進める事が出来るようになるという。

つまり、アンダーソンがマトリックスを真に理解して、ネオになったのと同じ状況になるという事だ。

じゃあ、この本のおまじない的なプロセスという作業をする事で、最終的にある地点を越えると、ネオのように空を飛んだり、弾丸を止めたりできるようになるのかというと、そうではないらしい(汗)。

まあこれでシャインフェルドが空中浮遊してる写真とか出てきたら、もうオウムの麻原かよ!っていうツッコミが出来そうだが、

そういう事が出来るなんて言ってない所が、この本がギリギリカルト宗教ではない理由なんだと思う。

最初私は、マネーゲームからの脱出とは、金持ち父さん貧乏父さんでいう「ラットゲームからの脱出」の事だと思っていたのだが、そうではないようだ。

この場合のマネーゲームの脱出とは、悟りを開く事を言ってるように思える。
ようは、もうお金無くてもあっても、どうでもいいや。私は生きてるだけで素晴らしい存在で、幸せなんだみたいなレベルで生きていくという事が、マネーゲーム脱出を意味するらしい(私の解釈では)。

私は最初この本を読み始めた時は、ネオのようになれるのかとちょっとワクワクしていたが、途中からとにかく怖くなった。

その恐怖心をプロセスというおまじないを使って消してけというのだが(この辺はオポノポノと近い原理)

どうもプロセスは、自ら厄災を招き、それに突っ込んでいくような行為のようで、とても良いものとは思えない。

この本を読んで学べた事は沢山あったが、盲信するのはとても危険に感じたし、幸せどころか不幸を引き寄せかねないと感じた。

この本のこわい所は「きっと~だろう」ではなく、全ての事象は「〇〇なんだ!」と断言してる所である。つまりこの世がマトリックス世界で、実はそれを作った神様はあなた自身なんですよというのを、宗教のように断言しているのだ。

まあ、この本の目的が、この世界はマトリックスであると100%信じる所が、ゴールなので、作者のシャインフェルドが100%それを信じて書いてるのは仕方ないと言えば仕方ないのだが、ちょっとこれはカルト宗教と変わらんぞという感じで一抹の怖さを感じた次第です。

ここでは、ネガティブな部分に絞って書きましたが、全体的な感想としては、ためになった部分も沢山ありました。それはこっちの記事で書いてます。(文/道長 灯)